法律解説

2010年12月24日



taniharamakoto at 10:39 

2010年09月28日

約1年半にわたり、1万951回の無言電話をかけて「不安性障害」にさせたとして、兵庫県警宝塚署は、2010年9月27日、傷害容疑で自称書道家(44)を逮捕したとのことです。

「不安性障害」というのは、簡単にいうと、通常人に比べてとても大きな不安を感じてしまい、その結果日常生活に支障をきたしてしまう症状のようです。

無言電話の理由は、被害者である女性の長女(11)が夕方にピアノの練習をしていることだそうで、音に腹を立て、「音がうるさい」と怒鳴り込んだこともあったといいます。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100928-00000515-san-soci

無言電話をかけて「傷害罪」というのは、ちょっと違和感があるのではないでしょうか。

ここで、刑法の条文を見てみましょう。

刑法第204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

つまり、傷害罪が成立するためには、「身体を傷害」しなければなりません。

今回は、「不安性障害」にさせたことが「身体を傷害した」と言えるかどうかが問題となります。

「傷害」というと、目に見える傷のような気がしますよね。

しかし、刑法では、「傷害」とは、「人の生理機能に障害を与えること」を言います。

したがって、必ずしも目に見える傷でなくても、傷害になり得ます。

過去の判例では、失神させた場合、メチルアルコールを飲ませてめまい・吐き気をおこさせた場合、髪を相当数抜いた場合、などがあります。

結構広いですよね。

面白いのは、髪の毛を相当数抜けば傷害なのに、婦人の髪を根元から切り取った場合には、傷害より軽い暴行罪にしかならないということです(大判明治45年6月20日)。

髪を抜けば生理機能に障害が発生するが、髪を切るだけでは、生理機能に障害が発生することにはならない、という理由です。

そうすると、髭や鼻毛、爪などを切っても傷害になりませんね。
(もちろん暴行にはなりえます)

「あっ、鼻毛伸びてるよ」と言って、相手の承諾を得ずにいきなり切ったら暴行罪になる可能性があり、ブチッと抜くと傷害罪になる可能性がある、ということです。

立件されることはほとんどないでしょうが・・・

今回の場合、無言電話を1万回以上かけ続け、その結果、「不安性障害」という生理機能に障害を発生させたことになるので、傷害罪で逮捕された、ということです。

法律って、難しいですね。


taniharamakoto at 20:00 

2010年09月26日

刑法第130条に、「住居侵入罪」という犯罪がある。

「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」

「正当な理由がないのに」というのは、なんでもかんでも理由をつければよい、ということではない。たとえば、家賃を払わない間借り人を追い出すために大家が侵入する行為が住居侵入罪になるとした判例がある(最決昭28・5・14)。

このような場合、面倒かもしれないが、ちゃんと裁判をして、強制執行で追い出さないといけないのだ。

人の住居というのは、人の日常生活に使用される場所のことであり、自宅はもちろんのこと、ハウストレーラーやテントも入る。

刑法の教科書には色々な例が出てくるが、面白かったのは、「条解 刑法 第2版」(弘文堂)だ。

住居侵入罪の対象には、「ドラム缶等は含まれない」(359頁)ということだ。


異議なし。

ドラム缶で寝ている人はいるかもしれないが、それに侵入するとはどういうことか、想像するのが難しい。

ドラム缶に入ったところで「住居侵入罪の現行犯で逮捕する」となったら、びっくりだ。

住居侵入罪で気を付けなければならないのは、表面上立入に対する「同意」があっても成立してしまうことだ。

たとえば、学校のトイレは教師や生徒、デパートのトイレは客などが自由に使って良いことになっている。

しかし、トイレに入る目的が、盗撮目的だったり、のぞき目的だったりすると、管理者の推定的意思に反した立入ということで、住居侵入罪が成立する。

また、強盗目的で、玄関から「ごめんください。トイレを貸してください。」と頼み、家の人が「どうぞ。」と言って、住居内に入った場合でも、住居侵入罪が成立する可能性がある(最大判昭24・7・22参照)。

同意があっても住居侵入罪が成立する場合があることは、憶えておいた方がよい。

家族間でも別居している場合には気を付けた方がいいだろう。

別居中の夫が妻の不貞の現場の写真を撮りに妻の住む自己所有家屋に侵入した行為で住居侵入罪が成立した判例がある(東京高裁判昭58・1・20)。

たとえば、夫が家出をして、その後離婚のための有利な証拠をつかもうと思い、合い鍵を使って妻が住む住居にこっそり入った場合、住居侵入罪が成立する余地がある。気を付けよう。

さきほどの「条解 刑法」によると、「1つの建物中の区画された部屋もそれぞれ独立に住居たり得る。アパート、下宿は当然であるが、他人の家に許可を得て入った後に隣の部屋に平穏を害する態様で入れば住居侵入罪が成立し得る。」という。

他人の家に入ったら、他の部屋に入れず身動きできなくなるということか?

いや、そうではない。「平穏を害する」かどうかが問題なので、普通に招かれて、普通に行動している限りは、他の部屋に入っても逮捕されることはないので、ご安心を。

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taniharamakoto at 20:04 
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